2025-03
kobayashi studio
Shinoda Coffee Workshops phase 1
千葉市蘇我の国道沿いにある築60年を超えるRC造3階建てのビルの一階に構えるコーヒーワークショップスペースのためのショップフロントカーテンウォールの設計施工プロジェクトである。
施主は、特別な技能をもったバリスタがコーヒーを完璧な状態で提供することを是とする現在のカフェのスタイルがコーヒー体験の間口を狭めていると考え、提供する側とされる側が一緒になってコーヒー抽出を体験し、コーヒーに対する間口を広げるようなワークショップ形式の店舗作りを模索していた。
“コーヒーはバリスタが完璧な状態で淹れないといけないのか”
プロジェクトを通して、コーヒーショップという場所作りにおける「こうあらねばならない」という固定概念を疑うことが、大きなテーマとなった。
“お店を出すなら東京でないといけないのか”
“多くの賃料を払ってテナントを借りないといけないのか”
元々、富津にある木工会社の出張所としてつくられた借地権付き建物である本物件のオーナーは、使うことのなくなった建物の処分に困っており、内装をほぼすべて解体したスケルトン状態のまま何年もただ地代を払い続けていた。築年数相応の劣化は見受けられたが、1階は資材保管の用に使われていたこともあって天井高さが4m近くあり、築60年のコンクリート造のブルータルな印象とも相まって、ラフでありながらも非常に魅力的な空間であった。
本プロジェクトにおいて、弊所が建物の維持管理や地主との交渉などの面倒ごとを全て引き受ける代わりに地代を賄う程度の格安の賃料で建物全体を借り受けることで話がまとまった。こうして、1階店舗スペースをこれまた格安で貸し出すことが可能となり、相場相応の賃料のテナントでは難しい実験的な店舗づくりが実現することになった。
“施主(素人)が作ってはいけないのか”
“材料は新品でなくてはならないのか”
限られた予算という制約と、多くの人とかかわりながら共にコーヒーに向き合うワークショップスタイルの店舗であるという特性から、ショップフロントのカーテンウォールについても多くの部分を施主やその友人知人による施工とするDITでプロジェクトを進めていくことが決まった。材料についても、プレカット工場から出る2m程度のSPF材の端材と、解体された住宅からでた産廃になってしまうアルミサッシの山からガラスを取り外して活用することで、タダ同然の金額で調達した。
施主による施工ということと、手に入る部材寸法の制約から、1400mm×800mmと700mm×800mm程度で組んだSPF材のフレームに溝を突きガラスをはめ込んだ2パターンのユニットを事前に制作し、それらを現場で互い違いに積み重ね、相互に固定することでカーテンウォールとしての強度を確保した。透明ガラス・型ガラス・すりガラスが混在する大量の廃材ガラスをフレームごとに使い分けダブルスキンとすることで、国道からの視線と音、熱を制御している。
蘇我は臨海部の埋立地に多くの工場が立地する京葉工業地域の一角に位置し、JFEスチールが製鉄所を構える“鉄の街”でもある。そうしたコンテキストを踏まえて、SPF材の方立は鉄くずを酢に浸して自作した鉄媒染液による染色で仕上げ、引手や戸当たりにも錆びたスチール形材の端材を使った造作部材を制作し利用した。工場スケールのフルハイトの大型引戸と、染色によるエイジングの質感が相まって、まるで元からそこに存在していたかのように馴染み、しかし新しく存在感のあるショップフロントが実現したのではないだろうか。
-コーヒーを試行錯誤するワークショップスペース もらいものでつくる
“お金をかけないといいお店は出来ないのか”
店舗内装については、予算の関係からほぼすべてを施主のDIYで行った。什器や家具、さらにはコーヒーの抽出器具に至るまで、多くのものを施主知人からの貰い物に頼り、店主と客が共にコーヒーを淹れるワークショップ形式の店舗を体現した内装となっている。
「こうあらねばならない」という固定概念を疑うことで、いままでは実現することが叶わなかった実験的で新しいコーヒーショップが実現した。いまにも朽ち果てそうな建物やうず高く積み上げられた産廃の山、普段の生活のなかで目を背けられているものたちも視点を変えるとまだまだ活用できるものが多くある。スクラップ&ビルドをひたすらに繰り返す建築生産に疑問を持ち、建物が打ち捨てられ衰退していく地域の現状に施主とともに正面から向き合ったこの過程が小さなコーヒーショップを建築たらしめ、チェーン店の連なる代り映えのしないロードサイドの街並みにおいて唯一無二の存在感を獲得しているのではないだろうか。
施主は、特別な技能をもったバリスタがコーヒーを完璧な状態で提供することを是とする現在のカフェのスタイルがコーヒー体験の間口を狭めていると考え、提供する側とされる側が一緒になってコーヒー抽出を体験し、コーヒーに対する間口を広げるようなワークショップ形式の店舗作りを模索していた。
“コーヒーはバリスタが完璧な状態で淹れないといけないのか”
プロジェクトを通して、コーヒーショップという場所作りにおける「こうあらねばならない」という固定概念を疑うことが、大きなテーマとなった。
“お店を出すなら東京でないといけないのか”
“多くの賃料を払ってテナントを借りないといけないのか”
元々、富津にある木工会社の出張所としてつくられた借地権付き建物である本物件のオーナーは、使うことのなくなった建物の処分に困っており、内装をほぼすべて解体したスケルトン状態のまま何年もただ地代を払い続けていた。築年数相応の劣化は見受けられたが、1階は資材保管の用に使われていたこともあって天井高さが4m近くあり、築60年のコンクリート造のブルータルな印象とも相まって、ラフでありながらも非常に魅力的な空間であった。
本プロジェクトにおいて、弊所が建物の維持管理や地主との交渉などの面倒ごとを全て引き受ける代わりに地代を賄う程度の格安の賃料で建物全体を借り受けることで話がまとまった。こうして、1階店舗スペースをこれまた格安で貸し出すことが可能となり、相場相応の賃料のテナントでは難しい実験的な店舗づくりが実現することになった。
“施主(素人)が作ってはいけないのか”
“材料は新品でなくてはならないのか”
限られた予算という制約と、多くの人とかかわりながら共にコーヒーに向き合うワークショップスタイルの店舗であるという特性から、ショップフロントのカーテンウォールについても多くの部分を施主やその友人知人による施工とするDITでプロジェクトを進めていくことが決まった。材料についても、プレカット工場から出る2m程度のSPF材の端材と、解体された住宅からでた産廃になってしまうアルミサッシの山からガラスを取り外して活用することで、タダ同然の金額で調達した。
施主による施工ということと、手に入る部材寸法の制約から、1400mm×800mmと700mm×800mm程度で組んだSPF材のフレームに溝を突きガラスをはめ込んだ2パターンのユニットを事前に制作し、それらを現場で互い違いに積み重ね、相互に固定することでカーテンウォールとしての強度を確保した。透明ガラス・型ガラス・すりガラスが混在する大量の廃材ガラスをフレームごとに使い分けダブルスキンとすることで、国道からの視線と音、熱を制御している。
蘇我は臨海部の埋立地に多くの工場が立地する京葉工業地域の一角に位置し、JFEスチールが製鉄所を構える“鉄の街”でもある。そうしたコンテキストを踏まえて、SPF材の方立は鉄くずを酢に浸して自作した鉄媒染液による染色で仕上げ、引手や戸当たりにも錆びたスチール形材の端材を使った造作部材を制作し利用した。工場スケールのフルハイトの大型引戸と、染色によるエイジングの質感が相まって、まるで元からそこに存在していたかのように馴染み、しかし新しく存在感のあるショップフロントが実現したのではないだろうか。
-コーヒーを試行錯誤するワークショップスペース もらいものでつくる
“お金をかけないといいお店は出来ないのか”
店舗内装については、予算の関係からほぼすべてを施主のDIYで行った。什器や家具、さらにはコーヒーの抽出器具に至るまで、多くのものを施主知人からの貰い物に頼り、店主と客が共にコーヒーを淹れるワークショップ形式の店舗を体現した内装となっている。
「こうあらねばならない」という固定概念を疑うことで、いままでは実現することが叶わなかった実験的で新しいコーヒーショップが実現した。いまにも朽ち果てそうな建物やうず高く積み上げられた産廃の山、普段の生活のなかで目を背けられているものたちも視点を変えるとまだまだ活用できるものが多くある。スクラップ&ビルドをひたすらに繰り返す建築生産に疑問を持ち、建物が打ち捨てられ衰退していく地域の現状に施主とともに正面から向き合ったこの過程が小さなコーヒーショップを建築たらしめ、チェーン店の連なる代り映えのしないロードサイドの街並みにおいて唯一無二の存在感を獲得しているのではないだろうか。
Photo : 千葉正人



















