2022.05
Shさんのための家

千葉県市原市にある古民家のリノベーションを設計施工した。二世帯で暮らす家族の母屋は築100年を超える古民家だったが、地下水の影響で床が波打ち見た目には到底使うことができそうもない状況だった。しかし上部構造には大きく問題は無く、伝統木造構法でのしっかりとした躯体が残っていたため改修を提案することとした。特に施主がすでに書斎を自ら設えたりと愛着が感じられ、古民家の風情と時間を蓄えた本質的な価値はぜひとも残したいと考えた。一方で現代の暮らしに合うかといえば暗く、湿気も多く、虫も隙間風も入り放題という状況は改善する必要があったため、レベルを取り直すと同時に防湿層としての通り土間を作り、古民家の持つ境界が曖昧でゆったりとつながった空間をより魅力的にするべく、各用途を持つ空間同士を角丸のカウンターで繋いでいくことを提案した。これによって、住む人達の活動に少しだけ指向性を与えることで、離れと母屋、キッチンと書斎、両親と子供達、祖父母と孫など、一緒にいるようでそれぞれが独立して存在していた要素がそれぞれに働きかけ始めないだろうかと考えた。古民家の持つ広さやゆとりといった要素が暑さや寒さといったネガティブな方向につながってしまうのだが、ゆとりがあり動きのある空間が暮らしの冗長性を生み、生活の中で起こる様々なイレギュラーを受け入れることのできる質的なアドバンテージを都市の住宅よりも持っているということを示すことができたのではないだろうか。

Photo : 佐藤亮介