2024.05
kobayashi studio
SさんAさんのための家
千葉県大多喜町にて養蜂を営む夫婦と子供3人、そしてご両親2人の2世帯7人家族のための住宅である。元々2世帯で暮らしていた自宅がある敷地での建替えを検討していたが、土砂災害警戒区域に指定されたことで擁壁の設置等に多くの費用がかかることが分かり、住み慣れた自宅近隣の土地を購入し新築することとなった。
こだわりをもった養蜂をし、クリエイティブにみえるご夫婦からの依頼に、初めは大家族で家族団らんの交流スペース、眺望を活かし開放的でオープンな地続きの2世帯住宅を思い描いたが、打合せを重ねていくうちに、プライベートではできるだけセキュアでこもれる環境を求めていることが分かってきた。一方の親世帯もまた、昔から家で家族が集まって過ごす時間は少なかったようで、共有スペースよりも寝室や書斎などのプライベートスペースや水回りの充実に重点が置かれ、仲は良いが相互に距離感を保ちたい2世帯の関係性が徐々に明らかになった。アンビバレントな二面性をもった家族、クールな外見とセキュアな巣、親世帯と子世帯、住まいと倉庫、そして内部と外部との関係を調停する住宅として、対比的に並置する空間構成をもつ形式が少しずつ導かれた。
住宅は1階を親世帯、2階を子世帯の住居とし、南側に寄せて大きくカーテンウォールを設けた外光を取り入れる水廻りスペースと、北側に開けた眺望を取り入れつつ開口を絞った居住スペースで構成される。普通であれば北側に寄せて配置される浴室や洗面、トイレなどの水廻りを南側に配置することで、外光に満ちた明るく気持ちよい水廻り空間を作りつつ、この敷地唯一のアプローチとなる南側道路からの視線(とはいっても、集落の最奥に位置し、この家を尋ねる人か田んぼの面倒をみる農家くらいしか人の出入りはないのだが)を遮り、セキュアな居住スペースとの間の、そして上下階で明確に切り分けた2世帯相互の緩衝空間となることを意図した。
対比的な構成は、ディテールにも反映されている。
水廻りスペースは造作のスチール方立と単柱によるカーテンウォールで大開口を実現。薄く見せる軒先や、スチール造作の階段など全体に線の細い意匠の空間となっていて、グレーを基調とした素材選択でクールな印象の建物の顔となる設えとした。一方の居住スペースは、内外全てを杉羽目板でくるみ、木の塊に開口を穿つマッスで彫りの深い意匠とした。外部に面した壁には、外張り断熱工法独特の大きな壁厚から生まれる奥行きのある開口と、本来はデットスペースとなる壁内空間を活用した収納やデスクスペースを設えることで、空間を有効に活用しつつ、外部環境からより距離をとることによるセキュアな居住空間を実現している。素材の選択にあたっては、地元の杉材を製材した羽目板を内外の仕上材として活用し、まさに養蜂箱に暮らすような住居が実現した。
新居と共にご依頼をいただいた倉庫にまで対比的構成は徹底され、似たもの同士の新居と倉庫の並置関係が結果的に農村らしい集落的な佇まいを獲得することになった。結果的に南側アプローチから眺める家の姿は、千葉の山奥には似つかない姿で、田舎でありながらクリエイティブな養蜂をするアンビバレントな家族の姿が暗に表現されている。
家族それぞれの個性、田舎に暮らしながらクリエイティブに働くということ、田舎だから、2世帯住宅だから、そんな当たり前を疑い、家族それぞれの二面性をありのままに受け止めることで、ここにしかない2つの家族のための巣が実現できたのではないだろうか。
こだわりをもった養蜂をし、クリエイティブにみえるご夫婦からの依頼に、初めは大家族で家族団らんの交流スペース、眺望を活かし開放的でオープンな地続きの2世帯住宅を思い描いたが、打合せを重ねていくうちに、プライベートではできるだけセキュアでこもれる環境を求めていることが分かってきた。一方の親世帯もまた、昔から家で家族が集まって過ごす時間は少なかったようで、共有スペースよりも寝室や書斎などのプライベートスペースや水回りの充実に重点が置かれ、仲は良いが相互に距離感を保ちたい2世帯の関係性が徐々に明らかになった。アンビバレントな二面性をもった家族、クールな外見とセキュアな巣、親世帯と子世帯、住まいと倉庫、そして内部と外部との関係を調停する住宅として、対比的に並置する空間構成をもつ形式が少しずつ導かれた。
住宅は1階を親世帯、2階を子世帯の住居とし、南側に寄せて大きくカーテンウォールを設けた外光を取り入れる水廻りスペースと、北側に開けた眺望を取り入れつつ開口を絞った居住スペースで構成される。普通であれば北側に寄せて配置される浴室や洗面、トイレなどの水廻りを南側に配置することで、外光に満ちた明るく気持ちよい水廻り空間を作りつつ、この敷地唯一のアプローチとなる南側道路からの視線(とはいっても、集落の最奥に位置し、この家を尋ねる人か田んぼの面倒をみる農家くらいしか人の出入りはないのだが)を遮り、セキュアな居住スペースとの間の、そして上下階で明確に切り分けた2世帯相互の緩衝空間となることを意図した。
対比的な構成は、ディテールにも反映されている。
水廻りスペースは造作のスチール方立と単柱によるカーテンウォールで大開口を実現。薄く見せる軒先や、スチール造作の階段など全体に線の細い意匠の空間となっていて、グレーを基調とした素材選択でクールな印象の建物の顔となる設えとした。一方の居住スペースは、内外全てを杉羽目板でくるみ、木の塊に開口を穿つマッスで彫りの深い意匠とした。外部に面した壁には、外張り断熱工法独特の大きな壁厚から生まれる奥行きのある開口と、本来はデットスペースとなる壁内空間を活用した収納やデスクスペースを設えることで、空間を有効に活用しつつ、外部環境からより距離をとることによるセキュアな居住空間を実現している。素材の選択にあたっては、地元の杉材を製材した羽目板を内外の仕上材として活用し、まさに養蜂箱に暮らすような住居が実現した。
新居と共にご依頼をいただいた倉庫にまで対比的構成は徹底され、似たもの同士の新居と倉庫の並置関係が結果的に農村らしい集落的な佇まいを獲得することになった。結果的に南側アプローチから眺める家の姿は、千葉の山奥には似つかない姿で、田舎でありながらクリエイティブな養蜂をするアンビバレントな家族の姿が暗に表現されている。
家族それぞれの個性、田舎に暮らしながらクリエイティブに働くということ、田舎だから、2世帯住宅だから、そんな当たり前を疑い、家族それぞれの二面性をありのままに受け止めることで、ここにしかない2つの家族のための巣が実現できたのではないだろうか。
Text:小林和史
Photo : 千葉正人













