2024.5
kobayashi studio
nicomaru
千葉県睦沢町にある長らく空き家となっていた築100年を超える古民家を、地域でチャレンジする方のためのシェアキッチン、シェアスペースとして改修する計画である。客席やトイレ、外装修繕など多くの部分を施主自身のDIYによって工事を行う一方、設備計画等の機能面で専門的な知見が必要となる厨房作業室の設計施工、建物全体のインスペクションや電気計画等のアドバイス、保健所や消防との協議のサポートを弊所で行うこととなった。
施主は計画地近隣でハーフビルドによって建築したゲストハウスを運営しながら、林業やデザイン業などにも携わる多能なご夫婦で、自身で図面を描いて検討し、基本的な大工工事までほぼすべて自分たちで出来てしまう、いわゆるプロDIYerと呼べる方である。やろうと思えば自身で全て出来てしまう人に対して、建築の専門家としてどのような形で協働することができるのかがプロジェクトを通してのテーマとなった。
設計にあたっては、施主が用意していた簡単な平面図をベースに検討がスタートした。すでにある程度、各機能の配置計画や作るもののイメージが固まっていたなかで、そうした計画を大きく変更するような全体性の提案は避け、厨房作業室と客席スペース、従業員と客のつながり、古いものと新しいもの、施主施工と職人施工の対比といった古民家シェアスペースに関わる事物の関係性のデザインに注力し、設計施工各フェーズにおいて都度施主と話し合いながら詳細を決定していくプロセスをとった。
エントランスを入って一番初めに見えるアイキャッチとなる厨房作業室のファサードには、シェアスペース利用者と来訪客の接点を最大化させるべく、連続する水平窓とカウンター兼陳列棚による境界を計画した。施設の一番の顔となるカウンター兼陳列棚には、施主が以前伐採して製材しておいたケヤキの一枚板を使用することで、存在感のある什器が実現した。また、もともと古民家にあった施主お気に入りの古建具を新たな引戸に、臼をカウンターの束石に転用したり、施主が知人から譲り受けた照明器具を提供してもらって活用するなど、古民家と施主の繋がりから導かれる素材やアイテム、ディテールを都度施主と話し合いながら決定した。
一方、多くの部分を新設する厨房においては、壁の塗装やタイル、建具やそのハンドル、照明器具やコンセントプレートに至るまで白色で統一し、今回の図となる施主による素材選びやDIYの手触り感を引き立てる地となることを意図した。こうして、これまでの長い歴史を見守ってきた古民家の大きな茅葺き屋根の下に、新旧の素材、DIYの手触りと職人の技、質感とクリーンさ、それぞれの関係性やコンテキストが混在しつつ織り込まれた、チャレンジする者の背中を押す力強い空間が実現した。
その他の施主施工部分においても、一部照明、建具一部照明建具の計画、工事をサポートすることで、施主の完成イメージを最大化すべくバックアップし、シェアスペースとして一旦の完成を見たが、施主によるDIYはスペースのオープン後も引き続き行われている。
印象的であったのは、工事の最中に職人の技能に見惚れ、その技や知識を吸収しようとする施主の姿であり、そこには、当初意図していなかったアマチュアと職人の新たな協働の関係性が形作られていたように思う。
建築家は医者と似ていると言われることがある。
自身の作家性や知見を押し付け、建築の全体性をコントロールしようとする試みが総合病院的なデザインだとすれば、施主自身の建築に関するリテラシーを最大化し、使われなくなった古民家(地域の滞り)に再び日を当てる、今回のプロジェクトにおける建築家の立ち位置は、まさに町医者的な建築行為と呼べるのではないか。
施主の背中をそっと押すような、そして古民家が施主や地域との関係性の中で再生され、使い始めてからも変化していくような状況をつくりだす。そうした町医者的建築行為がインスペクションから設計、施工まで連続して施主に寄り添うことで実現した。こうして振り返ると、今回のプロジェクトにおける施主と建築家の協働もまた、デザインされるべき関係性のひとつであったことに気づかされる。
一度は使われなくなった古民家が、再びその役目を見いだし、引き続き続いていく状態をつくる。こうしたプロジェクトにこそ、町医者的建築家としての役割があり、広義の建築デザインとして意義を持ちうるのではないだろうか。
施主は計画地近隣でハーフビルドによって建築したゲストハウスを運営しながら、林業やデザイン業などにも携わる多能なご夫婦で、自身で図面を描いて検討し、基本的な大工工事までほぼすべて自分たちで出来てしまう、いわゆるプロDIYerと呼べる方である。やろうと思えば自身で全て出来てしまう人に対して、建築の専門家としてどのような形で協働することができるのかがプロジェクトを通してのテーマとなった。
設計にあたっては、施主が用意していた簡単な平面図をベースに検討がスタートした。すでにある程度、各機能の配置計画や作るもののイメージが固まっていたなかで、そうした計画を大きく変更するような全体性の提案は避け、厨房作業室と客席スペース、従業員と客のつながり、古いものと新しいもの、施主施工と職人施工の対比といった古民家シェアスペースに関わる事物の関係性のデザインに注力し、設計施工各フェーズにおいて都度施主と話し合いながら詳細を決定していくプロセスをとった。
エントランスを入って一番初めに見えるアイキャッチとなる厨房作業室のファサードには、シェアスペース利用者と来訪客の接点を最大化させるべく、連続する水平窓とカウンター兼陳列棚による境界を計画した。施設の一番の顔となるカウンター兼陳列棚には、施主が以前伐採して製材しておいたケヤキの一枚板を使用することで、存在感のある什器が実現した。また、もともと古民家にあった施主お気に入りの古建具を新たな引戸に、臼をカウンターの束石に転用したり、施主が知人から譲り受けた照明器具を提供してもらって活用するなど、古民家と施主の繋がりから導かれる素材やアイテム、ディテールを都度施主と話し合いながら決定した。
一方、多くの部分を新設する厨房においては、壁の塗装やタイル、建具やそのハンドル、照明器具やコンセントプレートに至るまで白色で統一し、今回の図となる施主による素材選びやDIYの手触り感を引き立てる地となることを意図した。こうして、これまでの長い歴史を見守ってきた古民家の大きな茅葺き屋根の下に、新旧の素材、DIYの手触りと職人の技、質感とクリーンさ、それぞれの関係性やコンテキストが混在しつつ織り込まれた、チャレンジする者の背中を押す力強い空間が実現した。
その他の施主施工部分においても、一部照明、建具一部照明建具の計画、工事をサポートすることで、施主の完成イメージを最大化すべくバックアップし、シェアスペースとして一旦の完成を見たが、施主によるDIYはスペースのオープン後も引き続き行われている。
印象的であったのは、工事の最中に職人の技能に見惚れ、その技や知識を吸収しようとする施主の姿であり、そこには、当初意図していなかったアマチュアと職人の新たな協働の関係性が形作られていたように思う。
建築家は医者と似ていると言われることがある。
自身の作家性や知見を押し付け、建築の全体性をコントロールしようとする試みが総合病院的なデザインだとすれば、施主自身の建築に関するリテラシーを最大化し、使われなくなった古民家(地域の滞り)に再び日を当てる、今回のプロジェクトにおける建築家の立ち位置は、まさに町医者的な建築行為と呼べるのではないか。
施主の背中をそっと押すような、そして古民家が施主や地域との関係性の中で再生され、使い始めてからも変化していくような状況をつくりだす。そうした町医者的建築行為がインスペクションから設計、施工まで連続して施主に寄り添うことで実現した。こうして振り返ると、今回のプロジェクトにおける施主と建築家の協働もまた、デザインされるべき関係性のひとつであったことに気づかされる。
一度は使われなくなった古民家が、再びその役目を見いだし、引き続き続いていく状態をつくる。こうしたプロジェクトにこそ、町医者的建築家としての役割があり、広義の建築デザインとして意義を持ちうるのではないだろうか。
Photo:千葉正人













