独立系と呼ばれるお店やメーカーが流行している。もしかするともうすでに流行のピークは3年ほど前に過ぎてしまったのだろうが、その流行の裾野はもうそろそろ広がりきっただろう。そして、2010年代前半のこの流行の中心には、常にコーヒーがいたと言えるのではないだろうか。
コーヒーに主眼を置いて一杯一杯丁寧に、あたかもそれが数十年物のスコッチウィスキーのように、または、評価の高いビンテージの赤ワインのように扱い、形容し、提供するカフェが増えている。コーヒーをただの眠気覚ましとは考えずに、鮮度や焙煎に気を使い、産地や品種にこだわることで、店ごとの個性に価値を見いだしている。そんな、スペシャリティコーヒーと呼ばれるコーヒーを扱うカフェを、千葉県千葉市のはずれで計画した。
立地は千葉市の中でも隣の四街道市との境にあり、千葉北地域の工業地域や流通基地などで働く人々の生活圏として、また、自衛隊の駐屯地が目の前にあり、自衛隊の人々もよく行き来する場所である。平日の日中、若い人達は工場や倉庫で働くか、東京へ働きに出ていて、地域には高齢者か子育て中の女性が中心の地域で、オーナーもそういった人達に利用してもらえたら良いのではないかと考えていた。
空間は鉄骨造の倉庫に対して100㎡弱の空間を仕切ることで店舗とする計画である。このカフェのコンセプトを”ちゃんとしたカフェ”と定義して、カフェを開こうとする個人店オーナーが陥りがちな点をなるべく取り除き、提供するに値する店舗が計画できるよう考えた。
予算やオペレーションの都合などから既存建物の前方を壁でしきり店内としている。もともとの建物が備えている開口部をそのまま入口として使用するためにガラスを挿入し、その正面にちょうど平行に調理と提供スペースがある。左右の開口部から死角になる場所にダイニングテーブル席を用意し、中央にはローテーブルとベンチ席を用意した。
内装は全て塗装仕上げでカウンターやテーブルなどの天板になる部分はモルタル、椅子やテーブルの脚にまた建具には木材を使用した。できる限り既製品を使わないことで新建材の既製品だらけの一般家庭ではできない体験が、この店舗を個性的にするように計画した。
また、開口部の限定された店舗では外の緑を感じることが難しいので、各テーブルに緑を配するためにポットが埋め込まれている。それぞれに違う表情の植物とテーブルの天板が何度も脚を運んでくれる常連客にいつも新鮮な気分を提供できればと考えた。
Photo : Yoichi Onoda