市原市五井駅西口ロータリーのすぐ側に、コーワーキングオフィスを計画した。オーナーは今までの第二次産業中心に作られてきた市原市が産業構造の変化とともに街も変わるべきだと考えており、工場や工場に関係した労働者中心の五井駅の姿から、ノマドワーカーなどの新しい働き方、考え方を持った人たちが過ごすことのできる場所へと変化させられないかと考えていた。
この店舗のあるアーケード街は元々生鮮食品などを売る店が10件ほど軒を連ねる商店街だったが、最後の鮮魚店が数ヶ月前に店を閉じて以降は飲食店と銀行ATMと空き店舗だけで構成されている。この飲食店に居酒屋が多いため昼間はシャッターが閉じているので、五井駅を利用する多くの人々からはシャッター商店街だと認識されてしまっていた。
これは現在の市原市内で多く起こっている問題で、新しくできたショッピングモール周辺以外には昼間に訪れることのできる場所が極端に少なく、中心市街地であるはずの五井駅周辺でさえも昼間に空いていて誰でも入ることができるのはコンビニくらいしかない。このため、市原市全域の印象は閑散としていて活気が感じられない。
昼間の時間帯に人の気配や活気が顕在化することを狙った街づくりの一歩としてのコーワーキングオフィスであったため、気候の良い時期やイベント時などには1Fを開け放てるように、また、中で起こっているアクティビティも良くわかるようにガラスの引き戸で入り口を作ることにした。
店内の家具はオーナーの意向でkurosawa kawara-tenに関わる学生が製作し、ワークショップを行うことでできる限り店舗作りの過程に多くの人が関係するよう計画した。
また、家具は交差点を図式化したロゴを反復するように角材を組んで作られている。イベントのために壁面や床面にあまり造作を作りつけることができなかったため、この角材の組み合わせが小さな奥行きを作り、平面的になりすぎる店舗空間全体に深みを持たせることを狙った。
また、2Fは店舗の構造に変更を加えることができなかったため1Fとはっきりと設えを変えるようにした。奥のカウンターに1Fと同じ木組みを用いて構成を反復させつつ、既存床や壁面をほとんどいじらないことで秘密基地や屋根裏部屋の様なワクワクする雰囲気が、利用者のクリエイティビティや起業マインドを喚起することを期待している。
Graphic design : しなやかデザイン
Photo : kurosawa kawara-ten