現代建築ではしばしば同じ素材や同じ仕上がりが見受けられる。それは装飾をなくすということや、経済的な利点から選択されてきたものであったりするのだが、その仕様自体が目的化しているものもあるのではないかと考えてきた。
特に白い建築を近年たくさん見ることができ、それらが高い評価を得ている。確かに素晴らしいものも多いのだが、そうではないものも存在する。それではその白という色が好まれ、そしてある種の空間的な効果を与える何かがあるのであろうか。これらのことにはあまり考えられてこなかったように思える。
そこで、対照実験を行うことで白の効果を検証することを考えた。建物は昭和50年代後半に建てられた一戸建て住宅である。その当時の郊外型住宅としてはとても平均的で増改築はほとんどされていない。
屋根はセメント瓦、外壁はモルタルリシン吹き付け、アルミサッシで延べ床面積は約30坪ほど。この現代建築とは対極にある普通の住宅の外部を全てツヤ消しの白の塗料で塗りこめる。これによって建物の形状やあり方はその他周辺の住宅とほぼ同じ条件で、真っ白な家が出来上がる。
結果はやはり白には建物を現代的にする力があると考えられる。全てが一様であることで建材などの細部から物質性が失われ抽象化する。形だけが浮き上がってくることで建物が持つ形状としての存在が強調される。これらの効果のために白は建築を現代化すると考えられた。
Photo : Sayaka Mochizuki