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Rさんのための家

千葉県四街道市に30代の夫婦4人家族のための住宅改修を計画した。

 施主はこの街出身のグラフィックデザイナーであり、この家を買うまでもすぐ側の貸家に暮らしていた。数年前から東京での仕事の傍ら地元自治体のシティプロモーションを手がけるなどして地域での仕事も増やしているところでもり、子供の学区のことや地元への思い入れなどを考慮すると、購入する不動産の立地や条件も自然とその時に暮らしていた戸建て団地内の中古住宅を購入して改修するということになった。

 購入した住宅はもともとハウスメーカーが40年前に建てた30坪弱の小ぶりなもので、その後12年ほどして地元工務店によって増築された40坪の木造2階建てであった。施主はシンプルで古いオリジナル部分は気に入っていたのだが、新建材で豪華風に作られた増築部分は好きではないようだったので解体減築をすることがまずは決まった。しかしオリジナル部分だけでは現代の4人家族には少し面積が足りないことと、自宅での仕事も多い施主の生活を考えると、仕事場くらいは増やした方が良さそうだろうと考えられた。

そこで、仕事を夜遅くまでしていても、来客が多くても、家族があまり気にせずに生活ができるよう、オリジナル部分から飛び出させて仕事場を設えることにした。この仕事場は大きな明かり取りの窓があるが、掘り込まれた床面が作業中の外部からの視線を気にせずに集中できるように配慮しつつ、窓が夜に街の明かりとしてランタンのように住宅街に地元に根ざしたグラフィックデザイナーの仕事場があることを感じさせることができないだろうかと考えた。

 オリジナル部分も不要になった壁を取り除いて大きな空間を作りつつ、北側に作られていたキッチンを気持ちの良い東側で仕事場の雰囲気が感じられる場所に動かした。壁を取り除いて出てくる階段の無垢のラワンでできたササラはそのままにし、また天井も取り除いたままで仕上げとした。施主が内装計画での打合せで使っていたのがファッションでの例えであり、パッチワーク的でどこか外しつつラフな雰囲気の中にオリジナリティがあるようなものを求めていたため、随所に不確実性としての既存部分を残しつつ、白塗装と無垢のオークフローリングなどでニュートラルな仕上がりになるよう計画された。

これらは多くを施主のアイデアからスタートして決定していき、ディテールも施主との対話によって決定している。さらに、仕事場やダイニングの棚造作とデザインに大工の鄭さん、玄関ドアのデザイン造作に向く家具をデザイン販売するWoodworkに担当してもらう計画として、全体としては関係各者のアイデアが反映されている。

 千葉県の中でも有数のベッドタウンにある郊外戸建て団地で、その第二世代が既存建物を前提条件として更地の分譲地に新築一戸建てではない家の持ち方において、仲の良い夫婦と父親の仕事を尊敬しとても影響を受けながら育つ子供達が、人の用意した器ではなく自分達らしくストレスのない暮らしができるよう背中を押せるような住宅になっていたらと思う。

Photo : 千葉正人